ミラドライや剪除法の治療を受ける方は腋臭症（ワキガ）だけではありません。
臭いは無いが汗の量が多い多汗症の方も治療を受けられます。
脇汗の多汗症は正確には腋窩多汗症（えきかたかんしょう）と言い、原発性局所多汗症の1種です。

腋窩多汗症の診断方法
→【脇汗】多汗症と腋臭症（ワキガ）の診断・セルフチェックの仕方

脇汗が多いのは病気ですか？

「腋窩多汗症」というと脇汗が多いのは病気かと気にされる方がいらっしゃいます。診断基準の１つに生活に支障が出るほどの発汗というものがありますが、ほとんどの方の場合、汗の量が多いという程度です。
暖かい食べ物を食べると滝のように汗が出たり、少し動いただけですぐに汗でビシャビシャになったり、緊張すると汗が増えるという方もいらっしゃいます。
汗が出るということ自体は交感神経の働きによる生理現象ですので、発汗自体は正常な現象です。
また、汗が出ることは体温を調整するホメオスタシスですので、脇汗が多いからと言って病気というわけではありませんのでご安心ください。
続発性多汗症と言って更年期、疾病の合併症状、特定の薬物、又は中毒、痛風、甲状腺又は下垂体疾患による合併症状などで腋窩多汗症を誘発することがありますが、こうした要因がなければ、脇汗が多いのは体質的なものとお考えいただければと思います。

片方の脇だけ脇汗や臭いがひどいケース

稀に片側だけ脇汗がひどく、片側だけ治療は可能ですか？
と相談されることがあります。

結論から言うと治療自体は片側だけでも可能です。
ただ、片方だけ治療というケースはほとんどありません。
ミラドライでも手術でもほとんどの場合左右治療します。
手術の剪除法は片脇ずつ治療しますので、片側だけの治療、片側ごとの料金で治療を受けていただくことが可能です。
ただ、ミラドライはカートリッジの関係で片側だけでも料金は同じになります。

実際に左右の汗の面積や量が異なる方がいらっしゃいます。
中には片側だけ臭いが強い方、汗量が多い方もいらっしゃいます。
私が学生時代、医学部で行った生理学実験の１つに脇汗の実験がありました。
脇にモノを挟み、少し待ちますと身体の片側だけ汗が多くなり、もう片側が汗が少ないという現象が起こる現象を確認する実験です。
例えば、片方だけ脇汗が多いと感じられている場合、女性の方ですとバッグを一方の肩に常にかけていたり、重いものを常に片側に持っているなど、日常の習慣によっても汗の量は左右差が生じます。こうした現象が左右差を生む要因の1つと考えられます。
ですので、治療としては両脇処置することが一般的です。

臭いのない脇の多汗症の治療法は？

ワキガの治療方法や診断方法などはいくつか別の記事や動画でも詳しくご紹介させていただきました。

→【脇汗】多汗症と腋臭症（ワキガ）の診断・セルフチェックの仕方

臭いはないが、多汗症で悩んでいる方の治療法の選択でご相談をいただくことが非常に多いです。
近年では市販の制汗剤も発達し、優れた商品がたくさん誕生してきておりますが、それでも持続性はそれなりかと思います。
1日に何回も塗り直すなど苦労されている方も多いのではないでしょうか。
手術以外の選択肢としてご紹介しているのがパースピレックスという医療用の制汗剤です。
最初の1週間は1日1回塗っていただきますが、2週目からは週1回、又は2回で済むようになり、持続性が高い制汗剤です。
塗る頻度も少ないため、皮膚が被れる確率も少なくなり、お勧めしている商品の１つです。

ただ、パースピレックスでも限界はあります。
特に女性の方で多いのは脇汗で洋服の汗染みなど気を遣うのに神経を使うというご相談をお聞きします。
大変不便を感じられているのであれば、私はミラドライをお勧めしています。

発汗の原理としては交感神経の働きによるものですので、交感神経切除術という汗を減らす手術があります。
当院ではその手術は行っておりませんが、その手術を行うことによって上腕、前腕、手のひら、そして脇の汗までグッと減る治療法です。

ミラドライは高周波を用いて皮膚表面を傷つけることなく汗腺だけを破壊することができる優れた治療器です。
ミラドライは手術と同じように汗腺を破壊するため、持続性は手術と同様です。
また、傷をつけることなく基本的には生活上の制限なく治療が出来るため、働いていて、中々お仕事が休めない方にとっては最適な治療法です。

治療効果は手術の場合８~9割汗の量が減ります。
ミラドライの場合は1回の治療で６~8割の汗が減ります。
当院ではほとんどいませんがミラドライは2回目の治療も可能で、2回実施すると８~9割汗を減らすことができます。

子供の脇汗治療にミラドライはどうなのか

子供の脇汗に対してミラドライはどうなのかということを聞かれることがあります。
基本的には麻酔をしてミラドライの処置をする1時間くらい動かず、静止できるんであればお子さんでも治療は可能です。
しかし、汗腺も年齢と共に成長しますので、治療後、新しい汗腺が発生し症状が再発する可能性があります。
ですので、出来れば成人してからの治療が良いと考えます。最も早くても第二次性徴が終わってからとなります。

脇汗とボトックス注射について

ボトックスは脇汗抑制に効果があります。
1回処置すると３~６ヶ月は脇汗を減らすことができます。
ただし、効果は期間限定になります。ですからしっかりメンテナンスされたい方は年2回ボトックスをされる方も珍しくありません。
このように考えると何年間かボトックスをすれば金額的にはミラドライの金額と同じになります。
ミラドライですと効果は永続的で1回で６~8割くらいの汗量を減らすことができます。
何回もボトックス注射をされるのであれば、最初からミラドライを選択される方が結果的にトータル医療費を考えると経済的と言えます。

脇汗を抑える経口薬（飲み薬）

脇汗に限らず、全身の汗が多いという方がいらっしゃいます。
そういう方には汗を減らす飲み薬があります。
具体的な薬品名を言いますと「プロ・バンサイン」というお薬になります。
抗コリン薬として、副交感神経を亢進させるアセリルコリンの作用を抑える作用のある経口薬です。
服用することで交感神経副交感神経のバランスを安定化し、全身の汗が減ります。
例えば、試験の時に緊張して手汗が多くなり、回答用紙がベチャベチャになったり、会議などで緊張して汗だくになり、会議どころではなくなったり、仕事に支障をきたす方に処方される薬でもあります。
朝昼晩という飲み方が一般的ですが、スポットの服用という使い方も可能です。例えば、会議の時だけ飲んで汗を抑えるなどです。
また、テスト前に2錠飲んで、テスト直前にもう1錠飲むなど最も発汗を抑えたいタイミングだけ少し多めに服用するという使い方も可能です。
ただし、汗だけではなく、体全体の分泌が減りますので喉が渇いたり、目が乾いたり、人によっては便秘になったり副作用が生じる場合があります。
ですから、常時利用するというよりはここぞという時だけ使用するなど上手に使えば非常に有用性の高い薬です。
プロ・パンサインは保険で処方箋をお出しすることができますので、ご希望の方はご相談ください。

腋臭（ワキガ）や多汗症については記事や動画でも詳しく解説しておりますので、宜しければ合わせてそちらもご覧ください。

→【脇汗】多汗症と腋臭症（ワキガ）の診断・セルフチェックの仕方
→ワキガは病気なのか？何故ワキガになるのか。
→ワキガは自然に治るのか？
→ワキガの治療は結局どれを選ぶべきか
→ミラドライの効果と再発の可能性について
→（ワキガ治療）剪除法orミラドライ　どちらを選ぶべきか