つかはらクリニック院長のブログ

つかはらクリニック院長のブログ

公式Youtubeチャンネルでも配信中
公式Youtubeチャンネルでも配信中

【脇汗】多汗症と腋臭症(ワキガ)の診断・セルフチェックの仕方

わきが・多汗症
2020.08.17.月曜日
わきが・多汗症 | 2020.08.17.月曜日

暑い季節になると少し外出するだけでも汗ばみます。
毎年、夏になると脇汗に関する相談・来院が増加します。

以前にも何度か腋臭症(ワキガ)についてはご紹介させていただいておりますが、実際、脇汗に関する患者様のお悩みやご相談は臭いのことだけではありません。そこで、そもそも脇汗とは?についてご紹介してみたいと思います。

2種類の脇汗。その違いとは?

もうご存じの方も多いと思いますが、脇汗には2種類あります。
1つはエクリン汗腺から出る臭いの無い汗。
エクリン線は人体の全身にある一般的な汗腺で、解剖学的には粒の小さい汗腺からなります。
エクリン汗腺から出る汗の成分はほぼ水で微量に塩分やアミノ酸、尿素などが含まれますが、臭いは基本的にはほとんどありません。

そして、もう1つが臭いの元となるアポクリン汗腺から出てくる汗です。
アポクリン汗腺から出る汗もエクリン汗腺から出ると同様、最初は臭いはありません。
しかし、汗の成分がエクリン汗腺から出る汗とは異なり、水の他にタンパク質や資質、脂肪酸などが多く含まれます。これが脇にいる常在菌と化学反応を起こし臭いを発生させます。
3-メチル-2-ヘキセン酸というワキ独特の臭いです。(ビニルケトン類のツンとした酸化臭も特徴の1つです)

医学的にはワキガのことを腋臭症と言いますが、多汗症とは全く異なる症状となります。
それが、エクリン汗腺から出る汗なのか、アポクリン汗腺から出る汗なのかによって分類されます。

多汗症・腋臭症は遺伝するのか。

多汗症、腋臭症は遺伝しますか?とよく質問されます。
腋臭症(ワキガ)は遺伝するということはご存じの方も多い事かと思います。

アポクリン汗腺の症状は優性遺伝になりますので、父or母のどちらかが腋臭症の場合、又は両方が腋臭症の場合、高い確率で子供は腋臭症になることは遺伝的に証明されています。
臭いの無い多汗症に関しては因子が多岐に渡ります。例えば、先天的形質である原発性多汗症なのか、続発性多汗症(更年期症状、疾病の合併症状、特定の薬物、又は中毒、痛風、甲状腺又は下垂体疾患による合併症状など)なのかによっても因子は様々です。

また、局所性多汗症といい、手掌多汗症(手のひら)や足蹠多汗症(足底)、腋窩多汗症(脇)、頭部の多汗症やハーレンクイン症候群と言って交感神経の損傷によって上半身の片側だけ非対称的に異常に発汗差が生じるものなど多汗症は全身症状の1つで、種類も多岐に渡ります。

私自身もリサーチ段階ではありますが、恐らく遺伝要因はあると考えます。
また、代謝が高い方、よく運動される方も汗の量が多いように感じます。そして生活習慣が親御さんと似ている方で、且つ親御さんが汗が多い場合、お子様は臭いは無いが汗が多いという傾向があるように感じます。
汗の量は体質的なものと生活習慣や普段の環境因子など様々な要因があると考えられます。
全ての多汗症ではありませんが、原発性手掌多汗症(手のひら)は疾患遺伝子があることが予想された解析結果も論文発表されています。

参照:日本皮膚科学会ガイドライン2015年改訂版

多汗症・腋臭症の診断の仕方

脇汗の程度をどのように測ったらいいのか、という質問を受けることがあります。
脇汗の多汗症、正確には 腋窩多汗症(えきかたかんしょう)と言います。因みに腋窩とは「脇の下のくぼんだ所」という意味です。
この 腋窩多汗症は原発性局所多汗症の1種とされ、医学的な診断基準があります。

原因不明の局所性発汗が6ヶ月以上続き、以下の項目で2つ以上該当する場合

 ●左右対称性に多くの汗をかく
 ●多汗によって日常生活に支障が生じている
 ●週1回以上の頻度で多汗症状のエピソードがみられる
 ●25歳以下で発症
 ●家族歴がある(家族にも同じ症状の方がいる)
 ●睡眠中はひどい発汗はない

しかし、実際はこの「多汗」は汗量を正確に測定できるだけではありませんので、汗量は人によって感じ方に差があります。
つまり、臭いの無い汗量の多い少ないは自覚によって差が大きく生じますので、正確にはクリニックでの診療をお勧めします。

反対に臭いのある汗、つまり腋臭症(ワキガ)に関しては色々な診断方法があります。
例えば、保険適用となる方の判断基準は国のガイドラインで以下のように定められています。

「悪臭はなはだしく他人の就業に支障を生じる事実が明らかであって、客観的に医療を加うべき必要がある場合は給付して差し支えない。軽度のものは給付外」

つまり、周囲に影響を与えるような臭いのある方が保険適用になります。
その診断方法ですが、重度な症状の方は近くにいるだけでもわかるくらい臭いの強い方もいらっしゃいます。

その場合は診断は簡単です。逆に臭いの程度が低い方は、まずガーゼで脇を拭いていただきます。中等程度の症状の方であれば、直接置いてもらったガーゼを確認することで診断可能です。ワキガの臭いは3-メチル-2-ヘキセン酸というワキ独特の臭いを発しますので、腋臭症かそうでないかはこれで大体診断できます。

たまにうっかり診察前にシャワーを浴びてしまったり、制汗剤や芳香剤をつけてこられる方がいらっしゃいます。
その場合、脇にガーゼを挟んで2~3分待っていただいて同じように臭いを確認します。
日常の診察でよく思うのは、意外と臭いの少ない方でも臭いが相当きついと思い込んで来院される方が多いように感じます。
同じ手法で臭いを確認すると臭いの低い方の割合は多いように思います。
臭い強さを用いた診断には厳密な基準がありませんので、少し曖昧なところがありますが、私は臭いの低い方に対しては傷の残るような手術を進めることはありません。

ワキガのセルフチェック方法

腋臭症(ワキガ)かどうかをセルフチェックすることができます。
それは次の通りです。

1.耳垢がウェットで茶色い
2.下着が黄ばむ
3.発症年齢が第二次性徴期から気になり始めた
4.両親のいずれかがワキガ

が主な判断ポイントなります。

1.耳垢がウェットで茶色い

ワキガの原因はアポクリン汗腺から出る汗です。
このアポクリン汗腺は脇や外陰部、乳頭や内耳に多く存在する汗腺です。
耳垢が湿っているか乾燥しているかで1つアポクリン汗腺が多い体質かどうかが判断できます。
アポクリン汗腺の多い体質の方は、耳垢が湿っており、黄色い粘度の高い耳垢で、若干臭いがあることが特徴です。
単に内耳内が湿っているからと言って断定はできませんが、アポクリン汗腺が多いと疑われる症状の1つと診断できます。

2.下着が黄ばむ

ワキガの方は白い下着が黄色く黄ばみやすい傾向にあります。
アポクリン汗腺が多い脇、陰部、襟足などに黄ばみが出る場合、ワキガの可能性があります。
汗染みの黄ばみと勘違いされることがありますが、ワキガの黄ばみは黄土色のような濃い黄ばみになります。

3.発症年齢が第二次性徴期から気になり始めた

ワキガと年齢の関係性については以前別の記事や動画でもご紹介したことがありますが、アポクリン汗腺は第二次性徴時に発達する汗腺です。ですので、10歳、11歳くらいから臭いが出てくる傾向にあります。
ですので、このころから臭いが出てきた方はワキガの可能性があります。もちろん、程度は個人差があります。
反対に生殖期を超えた年齢になるとアポクリン汗腺は退化し、臭いも減少する傾向にあります。

4.両親のいずれかがワキガ

上記の遺伝の部分でもご紹介しましたが、ワキガは優性遺伝です。
ですので、両親のいずれかがワキガの場合、遺伝します。

他にも色々ありますが、上記4つが典型的で確実なセルフチェック項目と言えます。

脇毛の量と臭いの関係性

脱毛すると腋臭症(ワキガ)の臭いを理論上は減らすことができます。
皆様におススメするわけではありませんが、ワキガのメカニズムは常在菌との化学反応です。
ですから、別の記事でもかなり詳しく解説させていただきましたが、汗を減らすか菌を減らすかがワキガの予防、治療の原理ということになります。
脱毛して脇毛が減ると毛包に常在する細菌数が減ります。その結果、臭いが減る方がいらっしゃいます。
(ただ、脇毛を無くしツルツルにしても常在菌はゼロになる訳ではありません)

腋臭症・多汗症の治療方法

腋臭症(ワキガ)の治療方法については何度かご紹介したことがありますが大きく2種類の治療法を当院では取り扱っております。
1つは保険適用のあるメスを使った「剪除法」という治療。
それから、自費治療になりますがメスを使わない「ミラドライ」という機械治療があります。

治療の詳細は以下を参照下さい。
ワキガの治療は結局どれを選ぶべきか
ミラドライの効果と再発の可能性について
(ワキガ治療)剪除法orミラドライ どちらを選ぶべきか

ただ、臭いの無い脇の多汗症にもメスを使った剪除法は有効なのですが、私はお勧めしていません。
臭いがないと原則、剪除法は保険適用にならないという点、そして、術後のダウンタイムが大きく、日常生活に大きく制限が生じるためです。
臭いがひどくない方、臭いのない方の脇汗の治療はミラドライをお勧めしています。
多汗症であっても、治療原理は原則汗の量を減らすために汗腺細胞を破壊する治療が主になります。
ですので、ミラドライは非常に有用性の高い治療法の1つです。
ミラドライは保険が適用できませんので、少し治療費は高くなりますが、一度治療すると半永久的な効果を持続できます。
最大のメリットは治療後の生活制限がないことです。また、手術のような傷跡が残ることもありませんので、多汗症で悩む若い女性の方には特にお勧めの治療法です。

他にも汗を抑える飲み薬があります。
脇だけではなく全身の汗を減らす経口薬です。
色々な種類があり、使い方に少し注意が必要ですので、診察の際、症状に合わせて必要に応じて処方させていただくことがあります。

 

腋臭(ワキガ)については記事や動画でも詳しく解説しておりますので、宜しければ合わせてそちらもご覧ください。

ワキガは病気なのか?何故ワキガになるのか。
ワキガは自然に治るのか?
ワキガの治療は結局どれを選ぶべきか
ミラドライの効果と再発の可能性について
(ワキガ治療)剪除法orミラドライ どちらを選ぶべきか

ここを↓クリックしていただければ、はげみになります。よろしくお願い申し上げます。

にほんブログ村 美容ブログ 美容皮膚科へ
ミラドライ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。