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【ヒアルロン酸注射】まとめ、その2

しわ、小じわ、たるみ ヒアルロン酸注射
2016.08.13.土曜日

前回の頬骨上へのヒアルロン酸注射の追加説明です。まず、L1と呼ばれる頬骨弓へのヒアルロン酸注射ですが、側頭骨頬骨突起と頬骨側頭突起の縫合部は触診で軽いくぼみとして触れる場合もありますが、皮下脂肪が厚くて触れない場合は、頬骨弓のまん中か、やや後方に注射します。

デマイオ先生は、この触診の際に薬指のはらが最も敏感で触診しやすいと言っていましたが、私は示指か母指をつかって触診します。痩せた人であればこの縫合部分が容易にふれますが、皮下脂肪が厚い人の場合は縫合部分が、たとえ敏感な薬指をつかっても不明瞭です。

やっと、今回の本題です。下眼瞼のいわゆるゴルゴライン、nasojugal groove 解消のためのヒアルロン酸注射に関してです。まずは、マーキングから。患者さんは坐位で開眼し正面視で、瞳孔中心から下方(尾側)に下眼瞼上にマーカーで垂直に線を引きます。その線にほぼ直交するように、眼窩下縁の高さにあたる下眼瞼皮膚に横(水平方向)にラインに線を引き十字のマーキングをします。できた十字の内側下方に眼窩下動静脈神経が出てくる眼窩下孔がありますので、触診して別な色のマーカーで点としてマーキングします。

右下眼瞼の場合は、患者さんの右側に立ち、左手(利き手と逆手)の中指でこの眼窩下孔をおさえ、少し曲げた示指で眼窩下縁を押さえます。この操作には意味があります。ヒアルロン酸注射による眼窩下動脈塞栓や眼窩下神経損傷の予防と、眼窩(眼窩下脂肪)内にヒアルロン酸を注射しないためです。

少し曲げた示指の先のマーキングした十字中央を目安に、眼窩下縁にヒアルロン酸を注射します。この際も鋭針を用い骨(骨膜上)まで穿刺し、0.1-0.3mlほどのヒアルロン酸をボーラス法(玉状)で注射します。

ヒアルロン酸を深くうつ場合は必ず、シリンジを引いて血液の逆流がないか確認する必要があります。片手で吸引操作ができない場合は、針の先端が骨膜上の届いておれば、左手を患者さんの頬から離して、注射器の外筒を左手で保持して、右手で内筒をひいて血液逆流のないことを確実に確認してください。あとは、毎回同じように、ゆっくりゆっくり少しずつ注射します。もちろん、痛みのないことを確認しつつ、注射部位の皮膚周囲の色調変化に注意しつつ慎重にうっていきます。

左下眼瞼の場合は、患者さんに右を向いてもらい、いわゆるバイオリン式で患者さんの右に立って、同様の操作を行います。もし、患者さんの左側に立って左下眼瞼にヒアルロン酸注射をする場合、左手(利き手と逆)の指の位置が先程と違ってきます。

下眼瞼のこの部分へのヒアルロン酸注射を私はニードル(鋭針)で行いますが、カニューレ(鈍針)を使って注射する先生も多いです。先日参加した台湾での IMCAS Asia という美容外科美容皮膚科の学会でも、海外の多くの先生はこの部分に25Gの太目のカニューレ(鈍針)を使っていました。

その場合、下眼瞼外側から、まずカニューレより少し太いニードル(鋭針)で皮膚に小さい穴を開けて、その穴からカニューレ(鈍針)を挿入し、骨膜上にカニューレをそわしながら、眼輪筋下のSOOFに針を進めます。SOOFはsub-orbicularis oculi fat の略で、深い部分の脂肪です。上(頭側)は眼窩下縁の orbital retaining ligament と、下方(尾側)は zygomatic ligament にはさまれた脂肪です。

SOOFにヒアルロン酸を注射することで、 下眼瞼の tear trouph deformity を含め、ゴルゴライン nasojugal grooveが浅くなり改善する仕組みは、SOOFのボリュームがヒアルロン酸によって増えることにより、加齢によって緩んだorbital retaining ligament と zygomatic ligament が引張られて、頭側に押し上げられることで、nasojugal groove が浅くなるという仕組みです。この部分の解説は長岡京市いわきクリニック岩城佳津美先生が学会や雑紙に詳しく解説されています。SOOFのボリュームを増やすことで、中顔面が少しふっくらした印象になるので、切らないフェイスリフト midface lift ですね。

ニードル(鋭針)を用いて、SOOFではなく骨膜上にヒアルロン酸をうつ場合は、相対的に少ない量のヒアルロン酸で同じ効果が出せるように思います。SOOFにうつ場合は、0.3-0.7mlほど必要なのが、骨膜上では0.1-0.3ml ほどで十分です。

これは加齢によって上顎骨が”禿びる(ちびる)”ことによる後頭部方向へ後退と、それに伴う皮膚表面の nasojugal groove などの陥没に影響があるため、この禿びった(ちびった)骨の骨膜上にヒアルロン酸を補う方法は、生理的で合理的な治療ですね。

私がニードル(鋭針)を好む理由は、ヒアルロン酸を正確な位置に注射できるためです。正確な位置に注射できるということは、必要最小限の量で治療効果をだすことができ、患者さんの負担も減ります。カニューレ(鈍針)は、針の横に穴が開ていてそこからヒアルロン酸がでるので、思った位置にヒアルロン酸注射を届けることが難しいです。リニア(線状)にヒアルロン酸注射を行う場合は、カニューレでも比較的正確な位置に注射できますが、ボーラス(点状)に注射する際には数ミリ位置がずれることがあります。

すこしややこしいかもしれませんが、顔面の解剖を理解することで、この上顎骨が ”禿びる(ちびる)”ことによる後頭部方向への後退が原因である皮膚表面の陥没現象と、orbital retaining ligament と zygomatic ligament のゆるみによる中顔面の加齢変化の両方を、ヒアルロン酸注射だけで解消できます。

まとめといいながら、まとめになっていない、ヒアルロン酸注射レポートはまた続きます。

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