ほくろを切って取る場合は、元のほくろの大きさよりも約3倍ほど長く切る必要があるので、仮にケロイドにならなかったとしても、傷跡は3倍の長さになります。それがケロイドとなると、その3倍の長さの傷痕が延長し、さらに幅も5倍10倍と太くなってしまいます。
形成外科では、ケロイドになりにくいように真皮縫合と呼ばれる縫合をして、傷口に緊張がかからないようにすることで、ケロイドになることを防ぎます。真皮縫合を強くして、ウインナーソーセージのように皮膚を盛り上げて、傷の緊張を予防しても、ケロイドになるくらい、肩・胸・手の甲はの縫合は難しい部分です。
ですから、肩・胸・手の甲を含むケロイドになりやすい部分の皮膚腫瘍(ほくろ・いぼ・おでき)の治療は、できるだけ慎重に行うべきで、もし取るとしても、より小さい傷跡ですむレーザーで大きさも最小限に、深さもできるだけ浅く削るか、放射線治療ができるような少し大きな施設で準備をして、行う方が安全です。
仮にレーザーで取るとしても、術前に患者さんへの説明として、術後は最小限の傷跡でも盛り上がることがあること、もしふくれてくる傾向があれば、トリアムシノロン(ケナコルト)の注射を行う必要があること、内服の必要性もあること、それでも赤い跡が残ること、それらを患者さんにご理解して頂いた上で、処置を行うべきだと思います。