先日、テレビで映画”孤高のメス”が放送されていました。滅多にテレビで録画ではない映画を観ることはないのですが、久しぶりにライブで映画を観ました。
地方の市立病院で脳死肝移植に挑む外科医の話です。まだ、脳死肝移植が認められていない時代に、家族からの強い要望で、法律が未整備なままで脳死肝臓移植に挑みます。
この映画の中で、主人公の外科医が、”医師であり続けることが難しい”と語る場面があります。
医師は普通、いったん国家試験に合格し医師になると、更新試験や資格試験はありません。ですから、犯罪に関わるような特別なことがない限り、医師は何をしなくても”医師であり続けられます”。
なのに主人公の医師が”医師であり続けることが難しい”と言ったのは、より深い意味での医師であり続けることが難しいと語ったのだと思います。
目の前にある医療的な困難から目をそらさず、ごまかしたりせず正面から向き合い、自分のもてる技術と叡智を結集して、最善を尽くす気持ちを持つ医師であり続けることが難しいのだと思います。
ついつい忙しさの中で横着をしてしまったり、疲労から横柄な態度を取ってしまったり、医学的な判断ではなく、”しがらみ”にとらわれて、安易な判断をしてしまったりすることへの警鐘なのでしょう。年をとって、いつの間にか国家試験に合格した当時の正義感を忘れそうなときに、この言葉が心に響きます。
少し時間を取られましたが、映画”孤高のメス”は、内容もおもしろく、主人公の”医師であり続けることが難しい”という言葉が、私の心をうちました。