ほうれい線のたるみ治療にはヒアルロン酸注射がよく使われます。
先日、他院でヒアルロン酸注射の副作用で鼻が腐ってしまった人の報道がありました。ヒアルロン酸が、過って血管に注射されたために起こる副作用です。
形成外科専門医として訓練を受けていれば、どの位置に血管があり、どの深さを血管が走行していて、どの部分に注射すると危険であるかわかっていますので、事故を起こしてしまった先生は、形成外科でない先生か、経験の浅い若い先生であったと 推測されます。
また、もうひとつの原因として鋭針と呼ばれる先のとがった注射針を使っていたことで、血管にヒアルロン酸が間違って入りやすかったことが考えられます。
最初その報道を聞いた後、当院も鋭針を使っていますが、形成外科専門医として私には長年の経験も技術もあり、そのようなミスはしないとの自信がありました。
しかし、その先生をかばうのではありませんが、形成外科医でなくても大変注射の上手な先生もおられますし、若い先生でも技術の優れた先生が多くいます。単に、形成外科専門医ではないから、その事故が起こったと決めるのは難しいと思います。
ですから、この出来事を対岸の火事とせず、当院もヒアルロン酸が血管に入らないように、鈍針と呼ばれる先の丸い針を導入することとしました。
自らの技術に溺れることなく、患者さんにとって良いものを導入していくのは、責任をもって診療にあたる医師として、科にかかわらず必要な心得だと思っています。