形成外科の研修医として目が回るような忙しさに追われていたころに福井から連絡が入りました。
その内容は、彼女のお父さんからで”今年中に結婚式を挙げてほしい”とのことでした。
何の前置きも、何の兆しもなく、”今年中にと”連絡が入りました。彼女からも、あらかじめ何の知らせもありませんでした。きっと、彼女も同じ家にいながらお父さんから突然に知らされたことが想像されました。
あれほどお父さんは反対されていたのに手のひらを返すように”交際を許す”を飛び越して、”すぐに結婚しろ”と言わんばかりの勢いでした。
このお父さんの突然の翻意には影の立役者がおられたのです。交渉をお願いしたTさんのご尽力
のみならず、実は、彼女のお母さんが根気よく繰り返し、父さんを説得し続けてくれていたのです。
彼女が家出同然に実家を飛び出したときも、お母さんは計画をもともと知っていて、見て見ぬふりをして彼女を送り出してくれていました。
その後も、かたくなに気持ちを変えないお父さんを説得しつづけてくださいました。その結果、気の短いお父さんに”今年中に結婚するように”と決断させたのでした。
しかし、このありがたい知らせを受けても、ことは、そう簡単に進む状況ではなくなっていました
。
（つづく）

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