研修医として
自分を失うくらいに
働きづめでしたが
忙しければ
忙しいほど
時間を忘れて
彼女と離れている
寂しさを紛らわす
ことはできました。
超過密スケジュール
に追われる中でも
気持ちが安らぐことも
ありました。
大学出たての、
何も知らない研修医に
看護師さんたちが
大変親切だった
ことです。
先輩医師から
風邪薬処方の
指示がでたとき
薬の一般名は
大学で習って
知っていても
指示（オーダー）は
商品名で
行わなければ
いけないので
薬の名前が
わかりません。
そんなときは、
看護師さんが
教えてくれました。
忙しくて、
食事ももまともに
とれない私に
自分たちの
お弁当を少しずつ
分けてくれたり、
病棟詰所横の
看護師さんの
休憩室で
ついうっかり
ソファーで
うたた寝して
しまったときも、
いつのまにか
毛布を掛けて
くれたりと、
形成外科の
たった一人の
研修医を
本当に大切に
してくれました。
病棟や外来以外
でも同様で
ほとんど話したこと
のない看護師さんから
旅行のおみやげを
いただいたりなど
どこの部署の
看護師さんも
大変親切でした。
ほんの数ヶ月前までは
まだ残雪が畦（あぜ）を
覆う福井の地にいたのに
今は巨大病院のなかで
医局の一員として
喧騒の中で
白衣を翻して
ピカピカのフロアを
走り回る自分の姿に
酔っていました。
病棟から見える
北の空は、
梅雨の到来を
告げるように
すでに厚い雲に
覆われていました。

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