彼女は、
大阪に来るのが遅れた
理由を教えてくれました。
当日、
大阪に行く支度をして
お父さんにそのことを
告げると
そんなことは
聞いていないと
大阪に行っては
いけないと
土壇場で引き留め
られたのです。
まだ、
ふたりの仲を認めた
わけではないので
お父さんの気持ち
としては当然だった
のかもしれません。
普通なら、彼女は、
引き留められて
行けませんと、
電話で事情を
連絡するだけで
済むところですが
彼女は、
そうしなかったのです。
お父さんの反対を
無視して、預金通帳と
印鑑を握りしめて
お父さんの隙を見て、
家を飛び出して
きたのでした。
まさに、家出でした。
もちろん、
そのことを聞いて、
わたしは驚きました。
そのまま、
彼女を大阪に
引き止めてしまうと
状況を悪化させて
しまうことは
明白でした。
ここで、
事をこじれさせて
しまうと、永遠に、
修復不可能に
なってしまいます。
私は、
彼女を自宅に
案内する道すがら
今日中に、彼女を
福井に送り返す
ことを決めました。
福井まで往復しないと
いけないので
私の実家に到着しても、
挨拶もそこそこに
彼女を助手席に
車で福井に
むかいました。
路肩に、
灰色の雪が、うず高く
積みあがっている
夜の北陸道を
飛ばしながら
お父さんの怒りに
震える顔を想像し、
どのように説明を
すべきか考え
続けていました。
（つづく）

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