ニキビの正しい治療法をご存知ですか?いわゆる自己流の治療で逆にこじらせた経験はありませんか?ニキビ治療は一歩間違えると、むしろ酷くなってしまうことがあります。
当院は、美容形成・美容皮膚科になりますので、ニキビは専門領域となり、これまでにもたくさんの患者様の治療に携わって参りました。
ニキビは、10代から始まる思春期ニキビだけではなく、大人になってもできる非常に多くの方が悩む皮膚疾患の1つです。ニキビと一言で言っても、その種類は様々。ニキビの種類ごとに原因や治療方法は異なります。大切なことはニキビの状態に合わせて、適切な治療を選択していくということです。
そこで今回は、正しいニキビ治療について、以下のようなポイントからご紹介していきます。
● なぜニキビができるのか
● ニキビの診断はどのように判断するのか
● ニキビはどのような治療方法があるのか
● その他(食事などの視点)
ニキビの発生メカニズムを知ることが大事!
ニキビの原因とメカニズムを理解しているのと理解していないのとでは、その対処へのアプローチも変わってきます。逆に誤った対処をすると、最悪の場合、色素沈着でニキビ跡が残ったり、クレーターなどの陥没ができてしまう可能性もあります。
そうなるとその後のニキビ治療の難易度はぐっと上がってしまいます。ニキビ跡が残ってしまう確率を少しでも減らすために、ニキビが気になる方は一生の財産となる知識ですので、まずはメカニズムについてしっかりと学んでいただければと思います。
ニキビの種類と発生メカニズムの関係
まずは、ニキビ発生のメカニズムを見ていきましょう。
ニキビは一般的には大きく分けて、思春期ニキビと大人ニキビの2つに分かれます。根本的な原因は少しずつ異なりますが、いずれの場合も基本的にはニキビができてしまうメカニズムは一緒です。
どちらのニキビも何らかの原因で分泌された皮脂が毛穴につまって、その中でアクネ菌が繁殖し、毛穴内で炎症が起こるというメカニズムになっています。
さらに原因によって分けると、「思春期ニキビ」と「大人ニキビ」に分けることができます。そこで次に、思春期ニキビと大人ニキビのメカニズムの違いをご紹介します。
①思春期ニキビ
思春期ニキビの場合は、成長ホルモンの影響で皮脂が過剰に分泌され、それをエサにアクネ菌が繁殖することが原因です。場所としては、主にTゾーンで、おでこ・眉間・鼻周りにできやすいことが特徴です。
②大人ニキビ
大人のニキビの場合には、肌の乾燥が主な原因です。その他にも、ストレスや食生活の乱れなどの生活習慣が強く影響します。
乾燥を補うために皮脂が過剰に分泌されてしまうことで、毛穴にアクネ菌が繁殖して炎症を起こし、ニキビができます。大人の場合は、主にUゾーンの顎・口周り・顎下にできることが多いです。
皮脂が詰まりやすくなるメカニズムって!?
皮脂が詰まりやすくなるメカニズムを理解することも、ニキビの正しい治療のために欠かせません。
原因が違っても、まず皮脂が詰まることがニキビの発生源となっていることを理解しておくことが大切です。そして、皮脂が詰まる原因とは、毛穴の詰まりです。毛穴が詰まると皮脂も詰まりやすくなり、ニキビに発展していきます。
皮脂が詰まる原因としては、主に油分の多いスキンケアや密着性の高いメイクの汚れなどがあります。これらの汚れにより表皮の皮脂が酸化されたものが固まったものが角栓です。この角栓が毛穴をふさいでしまうと、アクネ菌が繁殖して炎症を起こしニキビができてしまいます。
角栓や汚れは正常な肌の場合には、普通の洗顔で洗い落とすことができます。しかし、さまざまな要因が重なって肌の状態が正常でなくなると、ニキビができやすい皮膚環境へと変わってしまいます。
皮膚の正常な働きを乱す要因とは?
では、皮膚の状態が悪化する原因は何なのでしょうか。原因として次のようなことが考えられます。
● ホルモンバランス(内分泌機能)の乱れ
● 紫外線
● 生活習慣の乱れ(新陳代謝の低下)
これらの要因がニキビを発生させるメカニズムを簡単にご紹介します。
①ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスとニキビには、皮脂分泌という点で深い関係があります。ホルモンバランスの乱れの要因となるのは、ストレス・睡眠不足・不規則な生活習慣です。特に、この中でもストレスは大きな影響があります。
●男性ホルモンの乱れ
ストレスはホルモン分泌を乱してしまうのです。ストレス過剰によって、ストレスに対抗するために腎臓の隣にある副腎皮質からアドレナリンやコルチゾールなどの分泌が促されます。
特に、コルチゾールは男性ホルモンを増やす作用があります。この男性ホルモンには皮脂分泌作用があるため、多く分泌されることで皮脂分泌量が増えてしまい、角化異常が起こりやすくなります。
その結果、毛穴の周りの角質が厚く硬くなり、毛穴を詰まりやすくしてしまうのです。さらに、多く分泌された皮脂がアクネ菌の増殖を助長して、ニキビができやすい状態になってしまいます。
●女性ホルモンの乱れ
女性の場合には生理によるホルモンバランスの乱れもニキビの原因になります。生理から排卵までの期間にはエストロゲンというホルモンが多く分泌されます。その後、排卵後から次の生理までの期間はプロゲステロンというホルモンの分泌が増えます。
このプロゲステロンは皮脂分泌を促す作用があり、生理前のニキビの原因となるのです。とくに生理前だけニキビが増えるという方は、女性ホルモンの影響を疑ってみましょう。
②紫外線や外部からの刺激
紫外線や外気など外部刺激も皮脂分泌を促すニキビの原因の1つに挙げられます。紫外線を浴びると、皮膚を紫外線のダメージから守るために皮脂が多く分泌されます。さらには紫外線を浴びすぎると、皮膚そのものを弱らせることにもつながります。
皮脂の分泌と皮膚の劣化により、皮膚のターンオーバーが乱れて、皮膚の再生サイクルが乱れた結果としてニキビができやすくなります。
③生活習慣の乱れ
生活習慣が乱れると、内臓機能や新陳代謝が低下しやすくなります。その結果、皮膚のターンオーバーが乱れ、ホルモンバランスも崩れてしまうと、皮脂分泌が活発になりニキビが発生しやすくなります。生活習慣の乱れは皮脂が詰まりやすい皮膚環境を作ってしまうのです。例えば生活習慣としては、食生活、生活リズム、睡眠など様々な要因があります。規則正しい生活と、バランスの良い食生活を心がけましょう。
このように、ニキビが発生する大元の原因は毛穴の詰まり・皮脂の詰まりです。この「詰まり」が発生するのは様々な要因が重なっているということを覚えておいてください。
以上のことからも、ニキビは複雑な皮膚疾患といえると思います。
ニキビの種類と原因
次にニキビの種類についてご紹介します。発生のメカニズムこそ似ていますが、ニキビにはたくさんの種類があります。それはニキビの発生から症状の経過に違いがあるためです。
ニキビは大きく分けると以下の2つに分類されます。
● 炎症性ニキビ(炎症を伴う)
● 非炎症性ニキビ(炎症が起きていない)
さらに細かくわけていくと以下の4つに分類できます。
● 白ニキビ
● 黒ニキビ
● 赤ニキビ
● 黄ニキビ
白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビ、黄ニキビの順に症状がひどくなっていきます。
白ニキビと黒ニキビが炎症を伴わない「非炎症性ニキビ」、赤ニキビと黄ニキビが炎症を伴う「炎症性ニキビ」となります。
タイプ別ニキビの特徴
では、それぞれのニキビについて簡単に特徴を説明します。ご自身のニキビがどれに当てはまるかチェックしてみてください。
<①白ニキビ(初期段階のニキビ)>
白ニキビは、いわゆる初期症状のニキビで、非炎症性のニキビです。毛穴に角栓が詰まって閉じてしまい、皮脂が毛穴内で詰まり少し膨れた状態になっているニキビです。
色は名前どおり乳白色で、白色のポツっとした形をしています。ふくらみ方や大きさは、皮脂のたまる度合いによってまちまちです。
ついつい潰したくなるような、小さなポツっとしたものが多いのが特徴です。白ニキビは、炎症を起こしていないので、大きさに関わらず患部を押しても痛くないことも特徴です。
<②黒ニキビ(非炎症性ニキビ)>
黒ニキビは、白ニキビが少し進行した状態です。毛穴に詰まった皮脂が少しだけ皮膚に露出するると、空気によって表面部分が酸化して黒くなります。見た目にホクロやシミなどと間違われることもあります。
黒ニキビも炎症を伴わないため、押しても痛みのない初期の段階のニキビになります。
<③赤ニキビ(炎症性ニキビ)>
赤ニキビは炎症を伴うため少し痛みがあります。非炎症性の白ニキビや黒ニキビがさらに悪化する方向で進行した状態です。
毛穴に詰まった皮脂を栄養分にしてアクネ菌が繁殖することにより炎症が起こり、赤ニキビへと進行します。アクネ菌が出す分解物が皮膚に炎症を起こすためです。
アクネ菌が繁殖することで炎症が起こり、皮膚表面が赤く腫れた状態になるので、他人から見ても一目でわかりますし目立ってしまいます。大きさにもよりますが、基本的に患部をさわると少し痛むことも特徴です。
<④黄ニキビ(化膿性ニキビ)>
黄ニキビは、赤ニキビがさらに進行した症状のニキビで、化膿を伴うことが特徴です。見た目は赤ニキビに似ていて、赤く腫れ上がった状態になっています。毛穴にに白または黄色の膿がつまった状態であり、膿自体は壊死した白血球を主とするものです。
黄色くなっている部分には細菌が多く、主にブドウ球菌・レンサ球菌、時には緑膿菌などの雑菌が付着し、炎症がひどくなることもあります。膿の部分は臭いがあったり、粘り気がある場合もあります。
この状態まで悪化するとニキビが潰れやすくなり、毛穴の炎症が深部まで広がってしまい、ニキビ跡がクレーターになる可能性もあります。
さらに注意して欲しいのが手で触れることです。ニキビを手で触ってしまうと、雑菌がさらに繁殖してしまい、ニキビが悪化しやすくなります。ついつい潰したくなる気持ちは分かりますが、絶対に潰さないようにしてください。黄ニキビは潰さずに、炎症をしっかり抑えていくということが大切です。
<黄色ニキビがさらに悪化した「ブラインドピンプル」に注意>
黄色ニキビがさらに悪化すると、かなり厄介な状態になることがあります。
完全に毛穴が詰まった状態で皮下組織内で炎症が強くなり化膿を起こした場合です。皮膚の下へ下へと 伸びるように広がってしまっています。
悪化した黄ニキビは表面上はポッコリと黄色く膨らんだ症状で、強い痛みをともないます。
ニキビの範囲や大きさ・深さによっては、ニキビがあるかどうか表面上は分かりづらいこともあります。
さらに、しこり様のものが触れたり、おできに見える場合もあり、触れるとかなり痛みがあることもあります。
この悪化した黄ニキビは皮膚の下に籠もったニキビということで、「ブラインドピンプル(見えないニキビ)」と呼ばれることがあります。ブラインドピンプルのように、深く皮膚の下に広がった黄色ニキビは少し厄介な存在であると覚えておいてください。
黄ニキビに進行しないよう対処することが大事!
4つのニキビの中でも、炎症をともなう赤ニキビ・黄ニキビにはとくに注意が必要です。
毛穴内部で炎症が起こっており、毛穴内が皮脂や雑菌で膨れ上がっている状態です。
膨れ上がった状態は皮膚が内部の圧力で広がっていることが原因であるため、治療方法を間違えてしまうとニキビ跡がクレーターになる可能性もあります。
また、炎症が発生した皮膚は色素沈着を起こして、濃く黒い赤ニキビのようなニキビ跡ができてしまう可能性もあります。
炎症性ニキビの場合、膿を伴う黄ニキビに進行しないように早めに予防していくことが非常に大切になります。
ニキビができやすい部位と主な原因
では次に、ニキビの部位別での違いについてご説明します。ニキビには特にできやすい部位があります。顔の中でも部位ごとにできやすい場所が存在します。次に、部位ごとのニキビの原因を紹介していきます。
①思春期にできやすい部位はTゾーン
思春期ニキビで最も良くできる場所はTゾーンです。おでこ・眉の周辺・眉間・鼻の周りの範囲にできやすい傾向があります。Tゾーンは顔の中でも皮脂線が多くあり、皮脂量が多い部分です。角栓ができて毛穴がつまりやすい部位でもあります。
特に、おでこは思春期にニキビが最も多く見られる場所で、前髪や毛先のシャンプーの洗い残しなどが刺激となり、ニキビができやすくなります。
思春期に男女ともに増加する男性ホルモンのアンドロゲンは皮脂分泌を促す作用があり、思春期ニキビの主な原因です。アンドロゲンの作用によりニキビができやすい皮膚環境へと助長してしまうことも特徴の1つです。
また、成長ホルモンの分泌も皮脂分泌を促すため、思春期ニキビを起こす原因となります。
②大人ニキビができやすい部位はUゾーン
大人のニキビができやすい部位はフェイスライン、つまりUゾーンです。顎・首・口周りにできやすい特徴があります。顎や口周辺は、主にホルモンバランスの乱れの影響でニキビができやすい部位です。
その他にも、食生活やストレスなどの影響でホルモンバランスが乱れることも原因になります。
皮膚の乾燥によって皮脂が余分に分泌されることによるニキビも、このUゾーンが多いです。
さらに以下の影響も気をつけることが大切です。
● 脂っこい食事が口周りに残る
● 偏った食生活
● もともと胃腸が弱い
③背中ニキビは菌が繁殖しやすい環境が原因
背中も顔のTゾーンと同じくらい皮脂腺が多い場所で、ニキビができやすい場所です。寝ている時に汗をかき、衣類や寝具などの通気性が悪いことが原因で菌が繁殖してニキビができてしまいます。背中はケアが届きにくい場所でもあるため、悪化させないよう気を付けることが大切です。
④シャンプーのすすぎ残しによるデコルテニキビ
胸元、デコルテのニキビは、シャンプーや洗顔料のすすぎ残し、また保湿不足が原因になります。ボディーソープの多くは弱酸性であり肌にはやさしいのですが、やや殺菌性が弱いためニキビができる原因になる可能性があります。
ボディーソープを愛用されていてデコルテや背中にニキビが増えた、という患者様もときどき見られます。
ニキビと似た皮膚疾患に注意!!
ニキビは一般的にありふれた皮膚疾患です。その原因は主に以下の3つが挙げられます。
● 皮脂分泌の亢進
● 毛穴の詰まり
● 毛穴の常在菌の増殖
しかし、他にもこれらの原因ではなく炎症が起きる皮膚疾患もあり、ニキビと間違えてしまうこともあるので注意が必要です。
真菌(カビ)による皮膚疾患とニキビの区別は?
真菌(カビ)が原因で炎症が起きる皮膚疾患とニキビは別の病気です。
全てではありませんが、真菌(カビ)が原因の炎症は痒みをともなうことが特徴です。痒みがある場合にはニキビではなく、真菌などの感染による皮膚疾患を疑うのが一般的です。
真菌による皮膚疾患とニキビを区別する一番のポイントはコメド(面ぽう)です。コメド(面ぽう)と呼ばれる皮脂の塊があるかないかが重要な判断ポイントです。
もちろん、ニキビを潰して調べることをおすすめするわけではありませんが、ニキビを押すとコメド(面ぽう)が確認できます。一方の真菌による場合は、コメド(面ぽう)はありません。
<毛包炎や脂漏性皮膚炎、湿疹にも注意>
なお、真菌の中で多い炎症性皮膚疾患としては、マラセチアによる毛包炎が多くみられます。その他には、同じマラセチアが原因といわれる脂漏性湿疹という皮膚疾患もあります。
脂漏性湿疹は、鼻の溝や耳の裏・脇・胸・背中・髪の生え際などの皮脂の多い脂漏部分に発生する炎症性疾患です。炎症部分にかさぶたなどができたり、ニキビのように見えたりすることがあります。頭皮などに出来た場合には、フケが多くなる原因にもなります。
これらの病気とニキビを区別するには医師による診断が必要です。悩んでいる場合には早めに受診することをおすすめします。
ニキビは適切な診断と治療の選択が非常に重要
ニキビは皮脂が原因ですが、その経過によって種類のニキビが様々にあります。ニキビの種類によって治療の選択肢も変わってきます。そのため医師による診断の下、適切な治療を受けることが大切です。
また、ニキビだけでなく他の皮膚疾患も考慮するべきと言えます。真菌による皮膚疾患はニキビとは別の方法で治療する必要があります。
ニキビのようで実はニキビではない皮膚疾患もありますので、適切な診断と治療の選択が非常に大切であることを理解しておきましょう。