お見合をしたことを、僕に告げに来たお姉さんを責めることはできませんでした。
彼女のお父さんは、お姉さんと僕がつきあっていることを気づいていたのだと思います。お互いの気持ちが固まるまでに、あきらめさせようとしたのかもしれません。
その後も、お父さんは複数のお見合をお膳立てして、泣いていやがるお姉さんを無理矢理、連れて行きました。
お姉さんは、そのたびに、お見合の後、泣いて僕の下宿を訪れました。
医学部卒業が近くなれば、二人のこれからのことは、決めなければいけないことは自覚していました。しかし、その日が、これほど早く来るとは思っていませんでした。
もう、これ以上、お姉さんに、辛い思いをさせるわけにはいきませんでした。貧乏医学生の僕は、お姉さんのために、決心をしなければいけませんでした。
(つづく)