お見合をしたことを、わざわざ僕に告げに来たお姉さんが、僕以上によほど、辛かったと思います。お見合いをした理由を僕に告げることなく黙って、別れることもできたはずです。
正直に話しても、僕の逆鱗に触れ罵倒されるかもしれません。それでも、お見合のその日に
勇気を振り絞って僕のもとに、来て理由を話してくれました。
彼女は、二人姉妹のお姉さんです。お父さんの経営する会社を継いでくれる人を、養子にとって結婚することが定められていました。
福井は、”家”を大切にする伝統が残っているところです。彼女のお父さんは、”家”を守っていくために、長女のお姉さんには、婿養子を取らす必要があったのです。
そんなお父さんが、今回のお見合のお膳立てをしたのでした。福井の豊かな自然の元で、
はぐくまれた二人の恋物語は、吹きすさぶ風雪に立つ水仙のように、現実の前で、折られようとしていました。
(つづく)