泣きながら、僕の下宿を突然訪れたお姉さんの口から出た言葉は、”お見合してきたの”でした。
あまりにも唐突でした。今までそんなそぶりは、みじんもありませんでした。急に、お見合いをするなんて。
お姉さんは、僕に別れを告げに来たの?信じたくはありませんでしたが、彼女は事実を私に告げました。
決して裕福とは言えない一般サラリーマン家庭で育った僕には高嶺の花なのは最初からわかっていました。しかし、ここまで鉛筆一本で、しがみつく思いで医学部に合格した、医学部学生としての、自分への誇りもありました。
まさか、僕とのことは、最初から、お見合相手が見つかるまでの中継ぎだったのですか?
これが現実なのですか?
こうして、貧乏医学生と、社長令嬢との淡い恋は、これで終わりを告げようとしていました。
(つづく)