福井医科大学（現：福井大学医学部）合格発表後、親戚一同はじめ多くの人から祝福のお言葉を頂きました。何せ、私の親戚で大学に進学したものは殆どいない状態でしたので、それだけでも大きな出来事なのですが、それも医学部となると、もう親類縁者が大騒ぎでした。
　当時、父方母方とも祖母が健在でしたので、元気なうちに吉報を届けることが出来て、おばあちゃん孝行が出来ました。
　現役時に受験した大阪大学基礎工学部の不合格発表に、一緒に発表を見に行ってくれた、牛乳屋の叔父さんも自分の息子のことのように、私の合格を喜んでくれました。
　しかし、こうして私が合格の喜びに浸っている間にも、既に福井では入学に向けて準備が始まっていました。呑気な私は、合格発表後はしばらくらのんびりして、入学手続きをするついでに下宿を探せばいいや程度に思っていました。
　５６豪雪の残雪がまだ田んぼを覆っている福井では、試験が終わった段階で合格を確信していた生徒たちは、既に合格発表のその日から用意周到に要領よく下宿探しを開始していました。既に入学前から、私は少々遅れをとっていました。
　石にかじりつく思いをして、医学部合格を決めたものの、　医学部の合格は最終ゴールではなく、単なる一つの通過点に過ぎなかったのです。医師へのあこがれを現実にする本当の戦いは、これから何年何年も続きます。
（つづく）

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