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顔の○○リリースではほうれい線は治らない?

しわ、小じわ、たるみ
2023.02.20.月曜日
しわ、小じわ、たるみ | 2023.02.20.月曜日

 

「筋膜リリース」という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、その仕組みなど詳しくは知らない方が多いかと思います。

筋膜リリースという手技は、一般的には肩こりや首のこりをなくしたりすることで有名ですが、その他にも顔のたるみにも使われることがあります。
今回は、顔のたるみ解消に限定して、筋膜リリースについて解説していきます。

筋膜リリース誕生までの歴史

まずは、筋膜リリースの歴史について簡単にご紹介したいと思います。
かつて昔、筋膜リリースが始まった当初は、骨格のゆがみを治すことを目的としていました。
当時は強いマッサージをすることで顔のゆがみが治り、顔はもちろんのこと体全体にも良い影響が得られることが期待されていました。

骨格矯正の誕生とその真偽

筋膜リリースの他に、「骨格矯正」という言葉もよく耳にしますよね。顔に関する「骨格矯正」という言葉が使われはじめたのも同じ頃です。

しかし、この骨格矯正という言葉、骨折の治療などで顔面骨を手術できる私たち形成外科医にとっては懐疑的でした。

一般的に形成外科医からしたら、「骨は簡単には動くことはない」という認識だからです。
顔面骨は、「前頭骨」・「頬骨」・「上顎骨」・「下顎骨」などのいろいろな骨が組み合わさってできています。
イメージとしてその継ぎ目が動くというように思われる方もいるかもしれませんが、医学的には成人の顔面骨の縫合部分が動くということはまずあり得ません。
縫合部分を手などで押したところで、動いたり、ズレたりすることはまずあり得ませんし、まず不可能です。

当時、「顔面骨の骨格矯正」という言葉がでてきた時には、形成外科医からそんなことはあり得ないという反対的な意見が出ていました。

そのような経緯もあり、今では「顔面骨の骨格矯正」という言葉はほとんど使われなくなってきました。今だから言えますが、顔面骨の骨格矯正ができるということは、嘘だったということになります。

骨膜リリースの登場とその真偽

「骨格矯正」という言葉がなくなった後に、次に登場したのが骨膜です。
顔面骨の周りにある骨膜に注目され始めたのです。

その骨膜に対しては、以下のような手技がでてきました。

● 骨膜を移動させる
● 骨膜を剥離する
● 骨膜をマッサージで柔らかくする

「骨膜リリース」という言葉が登場したのもこの頃です。
この真偽についても先ほどの骨格矯正のときとほぼ同じです。
形成外科医は、顔面骨の手術をするときに骨から骨膜を剥がしますが、外から触ったぐらいでは骨膜は決して剥がれません。
骨膜を剥がす際には医療用のノミのような医療器具を使って骨から剥がしていきます。
専用の器具でないと、剥がれないくらいしっかりと骨膜は骨にくっついているのです。

骨の縫合部分が動かないのと一緒で、外から押したりする手技をする程度では、骨膜は外れたり動かしたりできるものではありません。
それが形成外科医などから指摘されたことによって、骨膜リリースなどの「骨膜◯◯」という言葉も徐々になくなっていきました。

それとともに骨膜にアプローチする、骨膜を何とかするというテクニックはどんどん消えていき、先ほどの骨格矯正と同じ運命をたどったわけです。

筋膜リリースの誕生と顔への効果の真偽

「骨格矯正」、「骨膜◯◯」の次に誕生したのが、「筋膜リリース」という言葉です。
筋肉の周りには筋膜があり、筋肉を包んでいるので、先の2つに比べれば信憑性のある手技です。

仮に筋肉を包む筋膜が固くなってきたとして、その部分をマッサージすることによって筋膜が柔らかくなるとします。その結果、肩こりや首のこり、筋肉痛などの「こり」が改善される可能性はあるかもしれません。

顔以外の骨格筋に関しては、「筋膜リリース」という言葉が正確かどうかは別として、筋膜を動かすことによる効果はあり得ると考えられます。上手なマッサージをすれば、良い効果が得られる可能性はあります。

筋膜リリースは顔にはNG

ただし、顔に関しての筋膜リリースについては別問題です。
形成外科を含めた顔の治療を取り扱う医師からすれば、逆効果だと考えられています。

特に、たるみ治療の目的での筋膜リリースは、形成外科医としては逆にたるみを促進してしまうと考えています。たるみを悪化させてしまう原因にもなるでしょう。

ここで、なぜ悪化してしまうのかについて簡単にお話します。

本サイトでも何度か解説していますが、顔の皮膚を支えるには、まずは骨があります。
そして、皮膚には靱帯と呼ばれる組織がつながっています。この間にさまざまなもの(脂肪、筋肉など)があります。
仮にこの部分に筋膜リリースという名のもとに強いマッサージを行い、筋膜が柔らかくなったとします。しかし、骨と皮膚をつなぐ靱帯まで緩んでしまうので、結果としてたるみの原因につながってしまうのです。

筋膜リリースという手技自体を悪いと言っているわけでもなく、まったく効果がないと言っているわけでもありません。ただ、目的を間違うと逆効果になるため注意が必要です。
いわゆる筋膜リリースは、以下のような効果を期待して受けられるのであれば良いでしょう。

● マッサージ効果により血流を良くする
● マッサージされることによるリラックス効果

顔の筋膜リリースは、顔の血流循環を良くする、もしくは、マッサージによるリラックス効果を期待して受けられるのであれば良いでしょう。

しかし、顔のたるみを改善ために、筋膜を緩めるような施術を受けることはおすすめできません。

骨と皮膚を結ぶ靱帯やそれ以外の部分が緩んでしまい、たるみが悪化する可能性が高く、皮膚もゆるんでしまいます。

繰り返しますが、過度な筋膜リリースはおすすめできません。
もちろん、筋膜リリースを完全に否定するわけではありません。

顔以外の骨格に関しては、筋膜リリースの効果も期待できるかもしれません。
顔に関しては、たるみを予防する、または治療する効果はないということを覚えておいてください。
あくまで、リラックス効果や血液循環の改善を目的に行うのが良いのかなと思います。

ほうれい線への効果について

筋膜リリースや顔のマッサージを受けるときに、気になる方が多いのが「ほうれい線」です。筋膜リリースを含め、顔のマッサージに、ほうれい線の改善を期待される方が多くいらっしゃいます。

そのため、顔の筋膜リリースで、ほうれい線のところを引き上げて、マッサージをする場合があります。

たしかにマッサージ直後は、物理的にシワを引っ張るわけなのでシワが目立ちにくくなるかもしれません。例えば、水分によるむくみがある人は、一時的にむくみが取れてスッキリした印象になります。
物理的に組織が上に引っ張られることによる作用ですが、あくまで一時的に効果があったような印象が得られるだけです。

もちろん直後は一時的とはいえスッキリするので、まったく意味がないと言うわけではありません。
ただし、原理的には一時的な効果であり、すぐに元に戻ってしまいます。

マッサージを受けた際には、肌の活性化のような反応も起こる可能性はありえます。しかし、強い筋膜リリースやマッサージをやり過ぎると、組織、皮膚、骨、骨と皮膚をつなぐ靱帯などが緩むため、強くやり過ぎないことが大事です。

ほうれい線対策として顔の筋膜リリースを受ける場合は、あくまで一時的にむくみをとる、またはリラックス効果などを目的にすると良いでしょう。残念ながら長期的に実感できるような劇的な効果ないため、過度な期待はしないことが大切です。

今回のまとめ

筋膜リリースを中心に、顔に関するマッサージの歴史として骨格矯正、骨膜対するアプローチについても解説してきました。

〇〇リリースという言葉は最近よく聞くフレーズで、患者様からもよく質問を受けることなので、美容医師としての立場からその真偽を解説させていただきました。顔の筋膜リリースを受けるのであれば、あくまで顔の血液循環やリラックスのためと、目的を明らかにしておくことが大事です。根本的な骨格の矯正やたるみ、ほうれい線の治療にはなりません。
もし、骨格のお悩み、たるみ、ほうれい線が気になる、という方は当院までご相談いただければと思います。

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